ろまん劇場1 生の姫は駆ける


 

 

 


「世の中の【物語】を数え切れないほど見てきた私だから言える。だから今から貴方にちょっと面白い【物語】を見せて上げましょう」







ムシューは髪が長い。それはもう腰につくかつかないかぐらいの長さだ。私もヴィオレットも最初こそは気にしてなかったけど世界を廻っているうちに男の人が髪を伸ばすのはイレギュラーだと知った。
髪を引っ張ったり、変に「パーマ」と言うヤツをかけてみたりと
ムシューの毛は私達の遊び道具となっていた。やってはいけないことだと知っていたけど。

「…ヴィオレット〜」
「何?」

こ の人は私と双子のヴィオレット。私の良き理解者でムシューの髪の毛で遊んでるたった一人の仲間でもある。私より落ち着いているように見えるし頭もいいよう に見える。でも私は自分を知ってもらいたいと思って自分を曝け出してるだけだし、元気なところを前面に出してるから馬鹿に見えるだけで本当は頭はいいの よ。え?それが「性格」だって?そんなこと知ってるわ。だってAKYだもの。

「あのね、あれよ!」
「あれって何よ…いつも主語が無いんだから…」
「慌てないでよ…ムシューのあの半端な髪を、

一緒に切ってあげよう!そう言い終わった時ヴィオレットの瞳が見開いたのを私は見逃さなかった。

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「で、今こんな状態になってるのかな?」

ムシューの髪には髪を留める為のリボンも、その先にある髪も無くなっていた。
正直、物足りないと思った。

「「ムシュー…」」
「nnななんだい?」
「「おめかししましょうか!」」
「ひぎゃっ!!!」

ああ…確か知り合い、というか友達のライラが「化粧品」とやらを持っていた。
その子に借りればいいだろう。

「ヴィオレット!ちょっとイベリアまで行ってくるームシューのことは…縛っといて!」
「ふふ…了解。」
「え…ちょまって…」
「大人しくして下さいねムシュー…でないと、分かってますよね。」

ドアを閉めて南へと向かう。
後ろからもの凄い殺気を感じるのは無視して




生の姫は駆ける
(楽しみですね!)
(オルタンスまだかしら…)