「幻の赤い実」それは東の崖にあるSHK最大の樹木の果実だ。
幹の太さは我が幹に手を回して付くか付かないかで高さは我の身長の3倍ぐらい。
実の味はどの果実にも劣らない。
崖という危険な場所にあるせいか一つの値段があり得ないほど高いが。
「着ィタ…」
道無き道を歩き始めて14分。木のある崖へ着いた。
丁度今が旬なのか実の色は鮮やかな赤だ。まるで真っ赤な血のように…
「…誰ダ」
後ろに生物の気配がする。我の後をついてきていたのだろうか。
「返事ヲシロ。今ナラ許シテヤル。出テ来ィ」
我がそう言うとおずおずと一人の少女が出てきた。
髪は肩より少し長く一つ結び。鼻の上の「そばかす」が特徴的だ。
「ソノ気配…サテハマダ冥府ヘ来ティナィ霊ダナ?」
「はい、ごめんなさい…でも伝えたいことがあって!」
「?伝ェタィコト…」
「幻の赤い実を採るのでしょう?なら…」
彼女が言うには赤い実ではなく黄色やオレンジ色の実の方が甘いらしい。
日の当たり過ぎない内側に多いから採りにくいと言っている。
「ナラ、ドゥスレバ…」
「私…採ってきましょうか?」
「ィィノカ?」
「ええ、何度も何度も登ってますからね!あ、でも幽霊だから飛べるんだ…」
「フッ…ナラ頼ムゾ」
背のことを利用するつもりだったが他の人に頼んでしまった。
「幻の赤い実」なのにオレンジ色や黄色の実を持ち帰れば皆がっかりするだろうか。
赤い実なら手は届くであろう。飾りでもいいから持ち帰ろうか。
「ット…届ィタ…アッ!」
「?!大丈夫ですか?!言って下さりましたら採りましたのに…」
足を踏み外して崖から落ちた、筈だが彼女が我の手首を握り支えてくれている。
彼女が生きている人間だったら我は落ちていた。
「…ァリガトゥ…ェット…名前ハ?」
「名前は…ありません。親に捨てられたので…」
「ソゥカ…ナラ早ク冥府ヘ来ルトィィ。楽シィゾ?」
「そうですか…でも私、」
両親にありがとうと言いたいのです。そう言い彼女は笑った。
「生んでくれてありがとうって、命を与えてくれてありがとうって…」
「捨テラレタノニ?」
「私のお母さんとお父さんには代わりはありませんからね」
「…親、カ…」
我に親なんてものいない。一体どんなものなのだろうか。
そんなこと想像がつかない。
「で、あなたは時間!いいの?」
「ア…」
「じゃあさよならですね。冥府は両親に会ってから行きますので。」
「ソゥカ…デハ、マタ冥府デ会ォゥナ」
彼女がだんだん薄くなっていく。それではと声が聞こえたので我も同じように返した。
「ソレデハ…」
さて、戻らなければ。少し怪我をしてしまったが擦り傷だから大丈夫だろう。
「ルキアトクロニカガ調理シテクレルカ…」
持チ帰ロゥ持チ帰ロゥ幻ノ果実ヲ…
Thank you & Happy birthday 4
(ィタッ!傷口ガ…)