ひかり

「メル君」

生と死の狭間、ふと聞こえた声に振り向くと
朝と夜の狭間の奴がいた

「…可愛い双子の姫君に外出禁止令を食らったんじゃ」
「メル君寂しがってたらなーって思って窓突き破ってきた!」

馬鹿かと言えば奴は僕のためなら硝子なんて痛くないと誇った様に言う
溜息をついてからいいから早く座れと視線で促すと困ったように笑う顔が見えた

全く持って奴は何を考えているのだろうか
こんな僕を好くなんて
あの何処ぞの王子以来だ
そんなことを頭の片隅で考えながら
奴のコートの所々破けた所の補修と
硝子で傷ついた傷口を治療するために
救急箱と裁縫箱を探す

「メル君、好きな人いる?」
「ムッティ」
「そうじゃなくて…」

言いたいことは分かっている。僕だってそこまで鈍感じゃない
奴が言うには十分鈍感らしいのだが

「そろそろ僕のこと好きって言ってよ…」

奴の言葉が心で爆ぜた
簡単に言うとなれば図星
遠まわしに言えば奴は心のアーチェリーの達人か、

僕の手にあった救急箱と裁縫箱は
奴の爆弾とも言える言葉の所為で
大きな音を立てて床に落ちた

鼓動は早まり
冷や汗は流れる

「動揺、した?」

しない方がおかしい、と言い終わり後悔した
肯定しているも同然だ

「メル君?言ってくれるよねー?」
「…いやだ」

言ってしまえば楽なのに

「僕なんて、愛する価値、ない」

口から零れるのは間逆の言葉

「メル君。」

呼ぶな、その声で

「ねえってば」

呼ばないでくれ

「メルヒェン…」
「呼ぶなっ!」
「なんで、泣いてるの?」

いつの間にか近づいて来ていた奴の指で涙が消えた
と、同時に包まれるかのように抱き締められた

『ムッティ!ひかりあったかいね!』

この暖かさを知っている
僕は、

「君が辛いのは知ってる。だけど一人じゃないよ?僕がいるもの。泣いて、喚いて、我慢する必要ないんだよ?」
「っ…」

嗚呼、僕は、僕は僕は僕は




僕は







「イヴェール…」





(僕は愛されたかったんだ)